今回は日本のプログレッシブロックバンドを紹介しよう。
その名も『Kenso』。知る人ぞ知る日本的プログレの金字塔だ。
1974年にリーダーの清水義央(本業、歯科医らしい)を中心にを結成され、メジャーデビューもしている。
まぁマニアックではあるが、通なら必ず知っておくべき重要なバンドだ。
今回はKensoの初期の名盤を紹介しよう。
KensoⅡ(1983)
日本プログレの歴史に残る傑作中の傑作。
- 空に光る
Kensoの代表作。
どうしてこんなものが作れるのか意味不明なほどの完成度を誇っている。
イタリアンプログレの手法でもって作られていると思われるが、他方で日本的であることをしっかり打ちだされており、簡単なことではない。
民族的で神秘的でありながら、非常にキャッチーなテーマは絶品であり、テーマをフルートが追いかけていく様が心地良すぎる。
前述の通りの至高のテーマ、中盤の重層化されたギターアンサンブルの楽しさ、予想のつかない展開を繋ぐ構築美…もはやプログレの傑作のひとつといってもよいだろう。
- 麻酔PartⅡ
いきなりポリリズミックな変拍子リフが畳みかけ、リスナーは(タイトルの通り)麻酔がぶちこまれたかのごとくトリップさせられる。
プログレが陥り勝ちな、トリッキー&テクニカルなだけでは良い作品にはなりえない。
本作はそれだけでなく、非常に美しい展開が待ち受けている。
KensoⅢ(1985)
よりフュージョンっぽく聞こえる。普通に名作。
- Turn To Solution
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ギターが前面に打ち出されており、キメも多くてカッコイイ。
人によってはCasiopea(和製フュージョンの王)っぽくも感じられると思う。
しかし随所にKensoならではの神秘性も潜んでおり、そこらの和製フュージョンだけでは得られないものがある。
SPARTA(1989)
『スパルタ』というギリシャのタイトルにも関わらず、どちらかといえば日本の古代を想起させるような作りになっている。
- 美深
個人的にKensoのなかでもトップを争う傑作。
イントロの海感全開のアコギのリフ、そこに追従してくるシンセのフレーズの民族的神秘感はもう「これぞKenso」とため息ものだ。
テーマが始まるとバンドアンサンブルにより、冷たくて深い海のイメージが追加されて極上と至る。
ギターによるメロディセンスが良く感じられ、これは王道の泣きギターぽいといえばぽいのだが、やはりサウンド構築の妙味によってありがちなものでなく、独特にして志向の高揚感を作り出している。
高揚感というならば、本作はエンディングの高揚感がKensoのなかでもトップクラスなので必聴である。
- The Stone Of Golden Hair
まず、いきなりのテーマのキメが最高。
ただかっこいいフレーズでキメるのでなく、抜群の和風テイストを讃えており、日本の古代の島を想起させる。
すぐさまプログレッシブにリズムが捻り、Kenso節の美しいシンセが彩る。
和風とイタリアンプログレの合間を違和感なく行き来するこのセンスがまさしくKensoだ。
歪んだギターがエキゾチックにそしてキャッチーに蠢く後半は今度はUKのような英国プログレのような質感でもあり、展開も楽しめる。
夢の丘(1991)
初期Kensoの到達点。こんなサウンドのプログレバンドが世界にあるか?
そして、昔ジャケ買いしたのを覚えているが、とんでもなく美しいアートワーク。
サウンドがBGMのように地味になったと思う人もいるだろうが、
- 心の中の古代
Kenso節抜群でありながらサウンドが『夢の丘』してる佳作。
なんともいえないエキゾチック性の序盤は美しく、ロックを全面に押し出した中盤はカッコイイ、終盤でこれらの展開をまとめあげる構築力はさすが。
- 謎めいた森より
ゲームの森系のステージのBGMと言った感じで、ジャケットのイメージにも一致する。
本アルバムでももっともBGMしており大人しいが、謎めいた神秘的な雰囲気に誘ってくれるよい休憩曲。
いくつか駆け足でみてきたが、これらはKensoの偉大なる功績のほんの一部にすぎない。
その凄さは自身でしっかり体感して初めて理解に繋がるだろう。
結局、日本最高峰の実力がありながら、選択したジャンルのマニアックさゆえに商業的には大成功には至らなかったことが悔やまれる。
そのことを強くうけとめ、次に繋いでいかなければならない。
Kensoは、日本民族的なる要素は、充分にエキゾチックで魅力的であり、見せ方次第では現代でも通じるということを証明しているように思える。