アーティスト紹介 Orion Riders

かつてメタラーだった時期もある。高校生のころがその全盛期だ。

その頃、塾の先生が超メタラーで教えてもらったマニアックなバンドがいろいろある。

その一つがOrion Riders。

1st『A New Dawn (2004)』をリリースしたはよいものの、もう情報がないので解散してしまったのだろうか?

diskunion.net

 

アルバムを一通り聞きなおしてみると、印象はAngraの影響にあるシンフォニックメタルといた感じである。

Angraよりもさらに耽美でよりネオクラシカル度が高いイメージである。(AngraStratovariusを構成を複雑にしキャッチ―さを減らしたような)

作風も硬派で、わかりやすいメロスピ路線でなく、構築美で魅せてくるタイプのプログレメタル風味。

それゆえキャッチ―さが不足しており、売れなかったのも仕方ない。

おおざっぱな印象はこのようなものだが、もう少し詳細に踏み込んでみよう。

 

ここでは表題曲『A New Dawn』について言及する。

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このアルバムのなかではすんなり聞けるほうであり、結構、可能性を示唆している楽曲である。

まず、スケールを駆け上がるメタルらしいギターソロから始まる。

ボーカルが入り、その歌い回しから前情報なしでもすぐにイタリア出身と分かり、キャッチ―さはあまりない。

また、ゴリゴリとしたサウンドソナタ・アークティカにも似通った質感で好みだ。

ジャケットの通り荒涼とした神秘的な世界に天使が横たわった、意味ありげな世界観が、サウンドで表現されている。

「Oh~New Daaaaawwwn」(適当)のコーラス部分もダークなミュージカル的でよい。

ラテン風のアコースティックパートから、スピードメタル、ミドルテンポとめまぐるましく展開が動く。

イタリア歌謡を感じさせるボーカルパートはダークでキャッチーとは決していえず、展開が複雑なことも相まって、本作は一体どこに向かおうとしているのか?

そのようにリスナーに一抹の不安を抱かせる。

しかし、その不安も「A saw my body fading as I read」の当たりからじわじわと、リスナーがもとめていたキャッチ―な動きがやってくることで解放の予感。

そこからサビに繋がるのが見事。

「Leaving this Time」をアウフタクトとして、その後ですぐに疾走させる唐突さ(Angraっぽいね)で虚を突かれ、ようやくキャッチーな展開でリスナーの心は解放される。

「不安→解決」は音楽理論の基本であるが、その仕組みを作品全体の作りとしてしっかりとやっている。

メタルでこのように構築で勝負できるバンドは少なく本当に貴重で、可能性のあったバンドだった。

 

一方でAngraのような飽きさせない演奏力が不足していたり、メロディセンスは惜しいし、これらの欠点によって佳作になりきれないのも事実。

ただし、このまま続けていれば進化していた可能性も充分にありえた。

それゆえ勿体ないことである。