このシリーズはこれまで超マニアックなバンドばかり紹介していたが、今回は「超」が消えて、ただのマニアックなバンドを紹介。
Thy Majestie。メタルマニアなら知る人ぞ知るイタリアのシンフォニックメタルバンドだ。
Hastings 1066 /Thy Majestie (2002)
イタリアのシンフォニックメタルといえばRhapsody(Rhapdosy Of Fire)がまず思い当たるが、Thy Majestieのアレンジスキルは同時期のRhapsodyにも引けを取らないどころか、少なくとも初期のRhapsodyは超えていそう。
そのくらい豪華にしっかりとストリングアレンジがされているのが本作である。
それもそのはず、彼らは本作の制作にあたり弱小レーベルながら、一生懸命プレゼンして説得しもぎ取った成果らしい。(前作まではあんなにチープだったのに)
特によく出来ているナンバーが中盤の『The Sight of Telham Hill』である。
まず、ケルティックなイントロはいかにも戦いが始まりそうでワクワクさせてくる。
疾走とともにザイマジェらしいAメロとなるが、前作までのチープさは豪華なクワイアとストリングスにより克服されている。
ここまでは、メロディックでないが、まるで語り部のようで、ゆえに次の展開を想像させる物語の導入的な効果がある。
魅力的なBメロが登場し、ハーフリズムでオペラティックな展開となり、トニックに完全に解決することでリスナーを物語のクライマックスへと誘う。
歌とコードが単にトニックに解決するだけなく、その後に絶妙にシンセがオブリガードを飾り付けており、そこが絶妙な効果を持っているようにも思える。
そして続くサビが凶悪だ。
(ザイマジェお得意の)キャッチーなのかそうでないのか絶妙なバランスでできているメロディで、それゆえ普段あまり得られない感傷に浸ることができる。
サビの後半でハーフリズムで畳みかけてくるのも良い。
特にラスサビではより引っ張ってからのエンディングなので高揚感が素晴らしい。
解散したかどうかは確認できていないが、『始皇帝 (2012)』を最後にアルバムはリリースされておらず、なかなか厳しそうである。
しかし、充分にいくつかの可能性について提示してくれており、我々はそれを受け継ぐべきだろう。